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患者早期警告システム開発 急変患者さんのリスク低減

徳洲会は、日本で初めて患者さんの急変を早期に発見する患者早期警告システムを電子カルテに導入する。患者さんの重症化や急変による死亡リスクを最小限に抑えることが狙い。9月に中部徳洲会病院(沖縄県)、その後、湘南鎌倉総合病院(神奈川県)に同システムを先行導入する予定だ。順次、他病院にも導入する計画で、院内急変事例の救命率向上に大きく寄与することが期待される。

患者早期警告システムは、一見安定していた入院患者さんの容態が突然悪化し、処置する間もなく亡くなるケースがまれにあることから、急変を早期発見し、患者さんを救命するために開発された。

徳洲会のシステムは、世界で最初に同様のシステムを開発したオーストラリアや、そのシステムを改良した英国のものを参考にした。患者早期警告システムは、日本での導入は遅れていたが、徳洲会は2010年にシステムの開発をスタート、9月に国内で初めての稼働を目指す。

オーストラリアではシステム導入後、入院患者さんの予想外の心肺停止率が0.4%から0.2%に減少、英国ではICU(集中治療室)での院内死亡率が22.7%から14.7%に有意に改善した。こうした結果を受け、患者早期警告システムは欧米各国で運用、グローバルスタンダードになりつつある。

患者さんの急変を早期発見する仕組みは、バイタルサイン(生命兆候)や意識状態などを点数化し、その点数が警戒レベルに達すると、警告音とともに電子カルテ上に警告メッセージが現れて知らせるというものだ(図)。警告が発せられれば、即ドクターコールとなる。

患者早期警告システムの流れ(仮)

患者早期警告システムの流れ(仮)

徳洲会では、このような患者さんの状態を測る警戒項目のなかに、看護師の「この患者さんはいつもと違う」、「何かがおかしい」という感覚を"第六感"として盛り込んだ。この警戒項目はオーストラリアでも導入されており、徳洲会は患者さんと接する時間の多い看護師の感性を重視した。

システムを開発した徳洲会インフォメーションシステム(TIS)の尾崎勝彦社長は、「このシステムでは患者さんの年齢や診療科によるパターンを追加したり、警戒スコアの基準値を変更したりすることができます。これにより病院規模や地域性、診療科に即したシステムの運用が可能です」と、独自開発したことにより汎用性の高いシステムになった点をアピールする。

急変を発見するには看護師の力が不可欠

「患者早期警告システムは、病院規模や地域性に合わせた運用が可能です」とTISの尾崎社長

「患者早期警告システムは、病院規模や
地域性に合わせた運用が可能です」
とTISの尾崎社長

患者早期警告システムは、回診時などに随時バイタルを測定している看護師が実質的に運用する。システムの目的は「患者さんの急変を見逃さない」ことだが、これはシステムがなくても常日頃から看護師がとくに気をつけている点だ。

しかし、新人看護師の場合、患者さんの急変サインに気づけないときもある。システムは、バイタルなどを点数化することで、こうした見逃しをなくし新人看護師をフォローするとともに、どういう場合に急変となるかを学ぶ機会も提供する。

ただし、システムを使って患者さんの急変をいち早く察知できても、急変時の対応をサポートできる看護師がいなくては本末転倒になってしまう。その役割はICUの看護師や病棟のリーダー看護師が担っているが、急変時に的確に対応できる看護師がさらに必要だ。

徳洲会グループ本部の遊佐千鶴・看護部統括は、「このシステムの運用にあたって最も重要な課題は、緊急時の対応を的確に判断できる看護師の育成です」と強調する。

「救急対応が可能な看護師の育成が急務です」と遊佐統括

「救急対応が可能な看護師の育成が
急務です」と遊佐統括

徳洲会では、集中ケア認定看護師や救急看護認定看護師の資格取得、TCLS(徳洲会2次救命処置)コースの受講を推奨し、救急対応が可能な看護師を増やしていきたい考えだ。

遊佐統括は、「将来的には、オーストラリアや英国のように、患者早期警告システム専門のリエゾン(多職種連携)チームを結成し、看護師の質向上を図って、患者さんのよりいっそうの安全確保につなげたい」と抱負を語る

先行2病院の方式はスコアリングに違い

ドクターコールを必要とする「警告」は、警戒項目の測定値が規定値を超えた場合に発信されるが、先行導入される中部病院と鎌倉病院では、警告を発信するに至るまでの警戒項目のスコアリングに大きな違いがある。

中部徳洲会病院では総スコアで警告発信

中部病院のシステムでは、警戒項目の測定値の総スコアが規定レベルを超えると、危険度が上がる仕組みだ(表)。3段階の危険度別患者さんのリストは電子カルテ上で確認でき、アルゴリズム(処理手順)に従って随時対応する。

「緊急度を評価するこのスケールを用いれば、新人看護師が患者さんの状態を把握するのが容易になります」と同院のシステム導入担当の上恵理子・看護師長は看護師の能力差を埋めるシステムのメリットを説明する。

重症化しそうな患者さんをリストアップすることで、医療従事者のマンパワーを有効活用できるうえ、事前に処置すればICUへの移送率を下げることも可能だ。ICUの空床率が低いという同院ならではの工夫である。

同院では看護師が介護職員や家族の声も聞き、"第六感"の一部としてスコアに取り入れる考えで、より多くの人の目をとおすことで患者さんの重症化を防ぐかまえだ。

湘南鎌倉総合病院は単項目でも警告発信

鎌倉病院のシステムでは、単項目でも警戒項目が規定値を逸脱していれば、警告発信される仕組みだ。システム上では、あえて警告以外の状態は評価せず、シンプルに運用するため、同院のアルゴリズムにはドクターコールしかない。そのぶん、この警告にどれだけ素早く対応できるかが運用の成否のカギを握る。 「システムの重要性を医師にきちんと理解してもらえれば、ドクターコールの際に『患者早期警告システムで警告が出ました』と、簡潔に緊急事態を訴えることができます」(遊佐統括)

急変時に看護師が自分の判断が正しいか迷うことなくドクターコールできることは、システムの利点のひとつだ。同院ではその利点を生かすため、システム運用に関して何度も看護師と医師とのミーティングを重ねてきた。導入までにより強固な協力体制を築く方針だ。

遊佐統括は、「システム導入により患者さんの救命率などがどのように改善されたか、有用性を証明したい」と話す。

徳洲新聞2012年(平成24年)7/2  NO.832 より

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